生活ほっとモーニングの訂正放送ー最高裁判決を受けて
今日(11月26日)、NHK総合テレビの生活ほっとモーニング(生活情報番組)を見ていたら、突然、アナウンサーの口調が改まり、昨日の最高裁判決を受けて、問題となった放送についての訂正放送が始まりました。
まず、判決の概要はこれです。
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訂正放送命令を破棄=放送法規定で初判断、賠償は確定-NHK離婚番組訴訟
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041125-00000576-jij-soci
「離婚した夫の一方的な言い分を放送され、名誉を傷つけられたとして、埼玉県の女性(58)がNHKを相手に、訂正放送と慰謝料などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(才口千晴裁判長)は25日、放送法の訂正放送規定について「被害者に裁判上の請求権を与えるものではない」との初判断を示し、2審判決のうち訂正放送を命じた部分を破棄した。130万円の賠償命令は2審通り確定した。
上告審では、放送で権利侵害を受けた人が裁判で訂正放送を求められるかが争点となった。 」
最高裁のホームページにも速報が載っています。
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http://courtdomino.courts.go.jp/judge.nsf/dc6df38c7aabdcb149256a6a00167303/da595f68c821d59049256f57000d75ee?OpenDocument
訂正放送によると、問題の放送は生活ほっとモーニングで8年前に放送されたもの。「妻からの離縁状・突然の別れに戸惑う夫たち」というテーマで、妻から突然離婚を切り出されて戸惑っている夫の心情を取り上げたもの。夫側の言い分(妻が突然家を出て行き一方的に離婚を要求されて離婚を強いられた、今でも離婚の理由は全くわからない、というような内容)が妻側の取材なしに放送されたようです。
ところは実際は、すでにその7年前に妻が離婚を切り出したことがあり、その後も何回か離婚を求めたこともあった、夫は妻が離婚をしたい理由を知っていた、妻は調停を申し立てて家を出た等の事情があった、一年の調停の後離婚が成立した、離婚の原因はお互いの人生観の違いということでした。
この訂正放送を見て感じたことが2つあります。
1つ目は、放送内容自体について。
「妻からの突然の離婚請求」の件数が増え、社会現象とすら言えるようになったのが、平成8年頃だったと記憶しています。テーマとしては適時であり、情報価値もあったと思います。
ただ、残念だったのは、掘り下げが浅かったこと。
なぜ夫にとって「突然」と受け止められるのか、本当に妻側からの信号はなかったのか、離婚を進めるために突然家を出る等の行動に出ざるを得なかった事情はどのようなものか等を取材し、そのような離婚の背景を掘り下げ、妻と夫の結婚観の違いが大きくなってきている、妻が結婚の継続のために大切であると考えることが夫にはなかなか分からない現実があるというところまで踏み込んで欲しかったです。
そのような視点があれば、一方的な言い分を、真実であるかのように放送することも回避できたでしょう。
2つ目は、最高裁判決を待って訂正放送を行ったというNHKの姿勢について。
裁判には勝っても結局自主的に訂正放送をするのなら、争わず、早く訂正放送するのが被害者救済のためには望ましいし、双方の無駄も省けたのではないか、というのが、訂正放送が始まったときの感想でした。
ところが、放送法を見てみると、「自主的?」
妻は、放送法の条文を根拠に訂正放送を請求しています。
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「放送第4条1項 放送事業者が真実でない事項の放送をしたという理由によつて、その放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から、放送のあつた日から3箇月以内に請求があつたときは、放送事業者は、遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して、その真実でないことが判明したときは、判明した日から2日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送投備により、相当の方法で、訂正又は取消しの放送をしなければならない。
最高裁は、この条文について、被害者が放送局に対して訂正放送しろと請求する権利を与えたものではない(即ち裁判でもって、放送局に訂正放送しろという命令の判決を貰うことはできない)が、(1)放送から3か月以内に被害者から請求があり、(2)放送内容が真実でないと判明したときは自律的に訂正放送を行うことを国民全体に対する公法上の義務があると判断しました。
要するに、被害者が裁判を利用して放送局に訂正放送をさせることはできないけれども、放送局は、(1)(2)に該当するときは訂正放送する公法上の義務がある、と言っているのです。
また、この法律の枠組みとして、義務違反に対しては、裁判所による放送の命令ではなく、罰則を予定しているということも言及しています。
最高裁が判決の中で生活ほっとモーニングの放送内容が真実ではなかったと認定しましたので、NHKにとって「放送内容が真実でないと判明した」にあたることになりました。
そこで、2日以内に訂正放送をしなければならなくなった・・・。
企業論理としては、事実誤認の報道を受けた被害者から、訂正放送を求める権利を行使されて、これに応ずる義務として訂正放送を行った、という前例を作りたくはなく、「請求権はない」という裁判所の判断を得た上で、自主的に訂正に応じた、という形を作ることによって、報道の自由を守りたかった、ということがあるかも知れません。
また、夫と妻とどちらの言い分が正しいか自社で判断することを避け、裁判所の事実認定に委ねたかったということがあったかも知れません。
ただ、なんかなあ。
天下のNHK。報道機関として、取材に基づき何を真実かと考え、報道するのが任務のはず。事実認定力は報道機関の生命線では?
裁判所の認定を待つなどせず、自社の調査で事実か否かを判断し、「真実でないと判明したので訂正放送します」ということはできなかったのでしょうか。
訂正放送は放送から8年後でした。
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